Talbo Bassについての考察②

はじめに

先日運良く初期型のTALBO BASS(以下初期タルべ)を入手することができましたので、再生産TALBO BASS(以下再生産タルべ)との差異を比較すると共に現物から初期タルべの謎を解明します。当時のカタログスペックなどは別エントリーにてまとめていますので、併せてそちらもご覧ください。

128bit-allurements.hatenablog.com

 

構造の差異

ここでは初期タルべと再生産タルべの差異について紹介します。

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①外観

まず大きく違う点はブリッジです。初期タルべはボディ直にマウントされているのに対して、再生産タルべはWilkinsonのWBG-4というブリッジが通常のベースと同様にネジ留めで搭載されています。

ブリッジ構造の差異
(初期タルべ下部の4つの穴はサドルを調整するためのネジ穴になっています)

次にネックジョイントについて、初期型は80年代製TALBOギターと同様にハの字型になったネックに嵌合する形が取られており、3点留めマウントであるのに対して再生産タルべは現在のTALBOギターと同様4点留めになっています。

ネックポケット構造の差

裏面もバッテリーボックスとボールエンド受け用のスペースの蓋があるのに対して再生産タルべはバッテリーボックスがあるのみです。

バッテリーボックスの差
(初期タルべはバッテリーボックスに加えてボールエンドを固定する部分にアクセスする部分があります)

またジャックに関して、初期タルべはシリンダージャックであるのに対して再生産タルべは通常のステレオジャックが搭載されています。

ジャックの差

初期タルべの3つのノブは筆者の方で現在のTALBOに採用されているタイプに交換していますが、本来はプラスチック製のノブが搭載されていました。またペグもリフィニッシュ時にGOTOH製のペグとHIPSHOTに変更していますが、元はFenderのベースについていそうなかなり大きめなペグが搭載されていました。

左:標準搭載ペグ 右:ノブ

②内部構造

ピックガード内部の構造から両者が全く別物であることがお分かりかと思います。初期タルべは各部分を隔てる壁があるのに対して再生産タルべはPUをマウントする突起以外は全て空洞になっています。

中を開けた様子

③回路

両者はどちらともプリアンプを搭載しておりサウンドコントロールが可能になっています。しかし初期タルべはロータリースイッチでサウンドモードを切り替えるのに対して、再生産タルべは一般的なTreble/Bassの2-Band EQコントロールとなっています。筆者は再生産タルべに元々搭載されていたプリアンプの音が気に入らず、パッシブ回路に入れ替えていますが元々は一般的なベース同様にプリアンプがピックガード下に入っています。

④音

どちらも金属製でノイズレス、アタックの速さを弾いていて感じることができます。しかし初期タルべの方が圧倒的な鋭さを感じるのに対し、再生産機はボワボワした飽和成分が多いように感じます。上述の通り両者は回路構造から全く違うこともありますが、一番は複雑な構造に対して中空構造といったボディの構造の差異が一番大きく影響しているのではないでしょうか。初期タルべに関するブログで弾きごたえが違う旨の内容を多く見受けられますが、非常によく理解できます。

考察1〜カタログスペックとの差〜

まずは生産年と生産本数ですが、シリアルナンバーがブリッジ裏のフタに書いてありましたので見てみますと4022041とあることから1984年製造であることが分かります。また海外掲示板"Tokai Forum"にてシリアルナンバーが4022031の初期タルべを所有している旨の書き込みがあることから、タルボベースだけで連番で生産されているならば少なくとも11本は存在することが考えられます。カタログにもあるようにプロトタイプが数十本流れ一般販売された形跡がないと言われていますが、これを見る限りこの噂は概ね合致しているように思えます。

またボディについて「マグネシウム1ピースボディ」としている記述が多く見られますが、私がどうもこれは疑わしく思えます。まず素材について、TALBOギター同様に単に"Metal Body"としか書かれていません。唯一素材について詳しく言及されているのはベースマガジン内に掲載された初期タルべの広告に

「世界初のメタルベース(Alをベースに研究開発された特殊合金T-ALLOY)」

とあるもののみで、マグネシウムボディであるといった記述は一切見当たりません。もちろん合金であるためにマグネシウムが混ざっていると思われますが、マグネシウムベースでできているわけではなさそうです。次に「1ピースボディ」である点です。本体自体はロストワックス法で鋳造製造されているようですが、一般的な鋳造よりも複雑な鋳型に対応しているとはいえこのボディの入り組み方はだいぶ鋳造にしては無理があるように思えます。またボディ側面に半分に入った線があることから、TALBOギター同様に2ピース鋳造ボディを挟んだ構造ではないかと考えます。以上の点から初期タルべは「マグネシウム1ピースボディ」ではなく「アルミ合金2ピースボディ」ではないかと考察します。

考察2〜回路構造〜

まず全体の回路の外観は以下のようになっています。

回路の外観

PU内部に入った大量の線がロータリースイッチにつながり、それがボリュームトーンにつながっています。ロータリースイッチ部以外は一般的な配線になっています。上述の通り初期タルべはプリアンプのサウンドコントロールはロータリースイッチで行いますが、具体的には

10ポイントセレクタースイッチを反時計回りに回していくと順に低音が足され、最後のポイントでミュートになる

ようになっています。私の初期タルべにはトーンコントロールノブの周りに目盛りが振られていないため不明ですが、おそらく大きな三角形の位置でミュートになるのでしょう。そのロータリースイッチですが、アサインは以下のようになっています:

単なる3接点4回路ロータリースイッチではなく不規則なアサインが取られています。また後述しますが10段階に音が変わるわけではなく、何点か同じ組み合わせになるポイントがあることから実際は6段階に音が切り替えられるようになっているといえるでしょう。

次にプリアンプの回路です。幸いプリアンプにカバーがついておらず剥き出しだったため回路を解析できました。回路図は以下のようになっています。

プリアンプ部の回路図

上述のロータリースイッチに繋がっているカラフルな配線はコンデンサや抵抗の合成抵抗値を決定するものであることが分かります。

一旦ここまでにして、また回路の詳細な検証は後日行いたいと思います。

(注 カタログスペックのソース:https://www.tokairegistry.com/images/catalogs/tokai853.jpg

https://www.tokaiforum.com/threads/tokai-talbo-bass.25174/